常日頃スケッチをしているのは、実際に自分の目で見て、観察して、描写する経験値を上げていないと、いざ急にコンテに描いてくださいと言われた時に、さてどう表現したものかと戸惑うことに遭遇してしまうのを避けるため、というのが理由の一つであり、もちろん、純粋に楽しみでもあるわけです。
毎度桜の時期に水彩画、パステル画の教室でもスケッチしに屋外に出かけ、地元の桜の名所でお花見スケッチ会をします。
桜の描写の難しさは、あの淡くて派手じゃない色でありながら、幾層にも重なり合ったくす玉状のフサが枝を覆い隠しながらも隙間もあり、空間を占める束の迫力があり、一つ一つの桜の花の形は遠目では見えないにしろ、確実に見る人の脳裏には桜といえば、あの桜の花の形、花びらひとひらのイメージが定着していて、実は実際にあるがままの姿をリアルに表現しようとするとイメージと異なっていたりします。よく桜の木が描かれた絵本にありそうな描写は、遠目で見た木のシルエットの中に、ズームした個々の花が記号的に散りばめられているものがわかりやすいと思います。
人の桜に対するイメージを喚起する、あるいはムードをもりあげるような仕掛けがいる場合があります。しかし自分らしい表現はどういう描写がいいのだろうか。いつも探っています。
先日、奥村土牛展に出かけ、桜の描かれた作品を数点見ることがありました。観察、描写、喚起、これぞ桜、なムードある演出。
絵コンテを描くときは迷っている時間がないことが多いです。この程度の描き具合でよしと見極め、描き進めないといけません。日々精進です。
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